PC造マンション(千葉県) 右:施工後 下:施工前
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1、可塑剤
従来の弾性防水材には可塑剤と呼ばれる薬剤が大量に配合されています。可塑とは柔らかく形を変えやすいという意味です。加熱すると軟化し、冷却すると固化する性質を持つ熱可塑性樹脂に、この可塑剤を加えると広い温度帯で弾性が発現し防水材となります。これが従来の防水材で、低コストで防水性及び高い施工性が得られるため、防水材のみならず塗料などにも可塑剤は配合されています。
しかしながら可塑剤には樹脂となじむ性質である相溶性があり、これが配合された樹脂からの他の素材への移行を招き、樹脂の硬化や収縮を引き起こします。例えば可塑剤を含むポリ塩化ビニルの消しゴムが筆箱に張り付いたり、輪ゴムがベタベタするのは可塑剤の移行が原因です。屋上防水材中の可塑剤は徐々に雨水等へ移行し防水材の硬化や収縮の原因となります。特に高温時にこの現象が起こりやすくなります。
これが従来の防水材の劣化の原因ですがPOLYFINには可塑剤が含まれていない為、経年で弾性の低下が起こりません。
(可塑剤の移行が原因の劣化(ポリ塩化ビニル)) |
2、不飽和結合
POLYFINのベースとなるポリオレフィン樹脂は炭素同士の多重結合がない飽和化合物です。飽和化合物は化学的に安定し水や酸との反応が起こりません。ポリオレフィン樹脂が食品包装に広く利用されているのはこのためです。
一方従来の防水材は、
(1)アスファルト
石油精製時の副産物であるアスファルトは天然物であるため炭素同士の多重結合のある不飽和化合物です。
多重結合の量は製品毎にバラつきがあります。
(2)ポリ塩化ビニル
製造時には不飽和結合はありませんが、経年で脱塩酸という現象が起こると不飽和結合ができ急速に劣化が起こります。脱塩酸というのはポリ塩化ビニルの-CH2-CHCL-部分から塩酸HCLが脱離して-CH=CH-と二重結合を生じる現象です。金属との接触や高温により脱塩酸は促進されます。
ポリオレフィンという樹脂自体高い耐候性がありますがPOLYFINにはさらに耐候性を高めるための高機能添加剤も混和されています。
3、紫外線吸収剤(UVA)
紫外線には強い化学的作用があり、有機物の分子結合を開裂し劣化させます。これを光化学反応といいます。
光化学反応が起こると樹脂の退色、クラックの発生、抗張力及び伸びの低下など防水性を低下させる様々な現象が起こります。
ドイツでは光化学反応の研究が古くから行われていて、様々な光化学反応を防止する添加剤が開発されてきました。
紫外線吸収剤は光化学反応を防止する代表的な添加剤です。その歴史は古くPOLYFINの樹脂を開発したドイツのメーカーが最初に紫外線吸収剤を発売したのは1957年(昭和32年)のことです。
有機物は紫外線を受けるとその光子のもつエネルギーから各分子中の電子の軌道が変わり(分子電子遷移)化学的に不安定で反応しやすい状態になります。これを励起状態といいます。反対に紫外線が当たらない状態はエネルギーが低く基底状態と呼ばれます。
紫外線吸収剤は紫外線光子のもつエネルギーを無害な熱、光、振動などに変換し放出することにより有機物を基底状態に保つ作用があります。
4、光安定剤(HALS)
紫外線吸収剤だけでは防ぎきれない光化学反応を無害化する働きのある添加剤を光安定剤といいます。
原理は紫外線吸収剤に似ており、励起状態になった物質のエネルギーを奪って基底状態に戻し(光化学的還元)、自身も励起状態から熱放出により基底状態に戻ります。通常励起状態でも反応性のない物質が使用されます。
紫外線吸収剤と相乗作用があるため通常併用されます。
右の写真はPOLYFINの原型となるECB(エチレンコポリマー瀝青POLYFINより純度が低く耐用年数が短い)という防水シートで約50年前に防水されたドイツの運河です。欧州ではポリオレフィン系シートを用いて土木工事をする際、防水の耐用年数を50年として計画します。
POLYFINは右の写真のECBより耐用年数は長いのですが、日本の複雑な形状の屋上では端部にシール材とウレタン防水を併用することが殆どなので、この部分のメンテナンスは必須となります。以下、保証期間中の流れです。
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